■心の絆、ハチ公とタマ公
老婦人が忠犬ハチ公の話を始めたのは、渋谷に向かうバスの中だった。15年ほど前のことである。私が席を譲ったのをきっかけに、昔はこの道路を電車が走っていてターミナルの渋谷駅には、ハチ公がいたと教えてくれた。
「それがまあ、汚い犬でしてね。屋台の焼き鳥をもらいに毎日、やってきていたんですよ」
実見談なので、説得力はある。しかし、飼い主の上野英三郎・東大教授が亡くなったのは、ハチ公が1歳半のときだ。それから昭和10(1935)年に死ぬまでの10年間、渋谷駅に通ったのだから、焼き鳥をもらう程度の楽しみはあってもよいだろう。
日本では、まずほとんどの人がハチ公のことを知っている。夕方になると上野教授を迎えに東京の渋谷駅に行っていたのだが、教授が大学で急死した後も毎日、駅で待ち続けた。雨の日も風の日も雪の降る日も。
この実話がハリウッド映画「HACHI」にリメークされて上映中だ。HACHIも秋田犬である。大学教授役はリチャード・ギア。帰らぬ教授を待ち続ける姿は見守る町の人々の心を変えた。
忠犬ハチ公は、日本人の心にも大きな影響を与えてきた。それだけでなく、じつは秋田犬の運命を変えた犬なのだ。もっというなら、日本犬全体を絶滅の危機から救うきっかけとなる働きをした存在なのである。
感動的なハチ公の話が日本中に知られ始めたころ、純粋な日本犬は、ほとんど消滅しかけていた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090821-00000058-san-soci
